第6章 不幸の予兆
「1on1をする時、ルールには負けたら相手のいう事を聞くとは言ってなかった!」
私は必死に逃れる術を考える。
「赤司っちに聞いたことないスか?
『頭が高いぞ』って…」
涼太がそう言った瞬間、急に怖さが押し寄せてきた。
怖さのあまり、私は尻もちをついた。
立ち上がろうとしても足が震えて立ち上がれない。
とうとうフェンスに背中がつき、追い詰められて逃げられなくなった。
「何があっても言わない…」
私は根性勝負に持ちかけてみる。涼太に勝てる最終手段だ。
「何があっても?例えば俺がキスしても?」
涼太の綺麗だけど少し怖い顔が近づいてくる。
私は黄色い瞳に吸い込まれそうに思い、目を瞑る。怖い。
チクリと首筋に痛みが走る。
涼太は私の首筋に一輪の赤い花を咲かせた。
「涼太に言えない。言ったら…私が辛くなる。」
「じゃあ辛くならないように俺が愛してあげる。」
「それじゃあ、余計にッ!」
私は口を止めた。これ以上何をしても目の前の凶変した狼に勝てるはずがないと。完全に私の敗北だ。
「涼太にだけ教える。その代わり皆には言わないで…お願いだから…」
涼太は私を横抱きに抱え、ベンチに座らせた。