第6章 不幸の予兆
ドリブルをする時の音がいつも以上に安心する。
私はドリブルでボールを掴もうとする涼太を交わし、涼太から一定の距離を作る。
真ちゃんに教わったスリーポイントをゴールから結構遠い距離でボールを打つため足を屈ませて力をため、打とうとした時、涼太にボールを弾かれボールを奪われる。
涼太は私のスタイルをコピーしたかのようにしてゴールに向かってボールを放り投げた。
私はさせまいと、限界まで手を伸ばすが手は届かなかった。
ボールが吸い込まれるようにゴールを潜り抜けた。
「そんな…私、初めて1on1で負けちゃった。」
「遥っちのいつもの鋭さがなかったおかげッス。」
いつもなら涼太は勝負事で勝てばもの凄く喜ぶのに今日は喜ばない。ニコリともしない。
「遥っち、俺達に隠してる事ないッスか?」
涼太に問われた後、私の心臓がドクドクと脈打つのが早くなった。
「隠してないよ。」
私は耳に髪をかける。
「いや、隠してる。遥っちは嘘をつくとき耳に髪をかけるんスよ。」
私は、耳に髪をかけた手を止める。
「初めて遥っちに1on1勝ったんス。だから教えてくれないスか?」
涼太の眼はいつもの優しい眼ではなく悲しい眼をしていた。