第2章 ひと言の勇気 _中篇_
_You side_
「あれ、これって…。」
またいつもの朝が来て
いつものように掃除していると
ソファーにパスケースが落ちていた。
「新規さんのかな?」
確かこのソファーに
最後に座ったのはあの人だ。
裏側を見ると
昨日のお客さんと大勢の子供が
笑顔で写っていた。
「学校の先生なのかな。」
にしては生徒が少ないような。
また今度聞こうかな。
あの感じだと
またこの店に来そうだし。
「波留ちゃん!」
「相葉さん、おはようございます。
こんな早くにどうしたんですか?」
時刻はまだ6時。
仕事も始まってるだろうし
昼休みでもないのに来るなんて。
「あのね、昨日のお客さん!
機嫌悪くなかったかなって。」
相葉さん、
まだ気にしてたんだ。
こういうところがお人よしというか、
それが人気の秘訣なんだろうけど。
「そんな感じには見えなかったけど。
それに近くまで送ったし。」
あの後、約束通り
私の車で送った。
本人は最後まで遠慮してたけど。
「そっかぁ、よかった!」
「相変わらずだね。
気になるならお店きなよ。
水曜日には必ず来ると思うし。」
コップを拭き
棚に直していくと、
いつもの帽子立てに帽子を掛け
こっちに駆け寄り、手伝ってくれた。
「ありがとう。」
「このくらいいつでも!
でも、昨日のお客さん
ニノのスイーツ気に入ったんだ!」
「多分ね。
やっぱり和也は凄いよ。」
時々、凄過ぎて
遠くにいる気がして寂しいくらい。