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消えた水曜日

第1章 ひと言の勇気 _前篇_


「本当にごめんなさい。」


相葉さんが
申し訳なさそうに
お冷とおしぼりをおぼんに乗せ
俺の目の前に置いた。



「あ、いいんですよ!
 こっちこそなんかすいません。」



駅長なのに
こんなところにいていいのだろうか
それが気がかりだ。


「相葉さん。
 そろそろ、駅の出入り口
 閉めなきゃいけないんじゃない?」



「あ、そうだった!」



相葉さんは慌てて
来客用の帽子立てから帽子を取り
振り向くことなく去って行った。



「いつものことだから
 気にしなくていいですよ。

 はい、これ。」


目の前に出されたのは
中にナタデココの入った
綺麗なゼリーが出てきた。



「チアシード入り梅ゼリーです。
 えっと…、なんだっけ?」



おぼんを抱きしめ
必死に何かを思い出そうと
眉間にしわを寄せ考えていると
後ろからあの男性がやってきた。



「あんたは見た感じ
 ストレスと精神的疲労がある。
 基本、そういう時はスイーツとか
 そう思ってるかもしれないけど
 スイーツはストレス解消に逆効果だ。」


ペラペラと話し続ける彼に
呆然とし口をあんぐりと開け
ただただ聞き続けた。


「梅にはストレス解消と
 疲労回復の効果がある。
 あんた、目の下に隅できてるし
 痩せてるから食べる暇ないだろうから
 チアシードで腹持ちよく作った。
 以上。」



長い長い説明が終わり
言い終わったとたんに
彼はカウンターキッチンに戻って行った。


「ごめんね、和也不器用だから。
 人間観察が得意だから
 お客さん観察してその人に合った
 デザートを出すの。」



確かに、さっきあの人が言ってたこと
全て当たっていた。
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