第4章 感情の行方 _前篇_
_You side_
「和也、ごはんできたよ。」
「ん。」
やっていたゲームを中断し
ダイニングテーブルに座り
何も言わず黙々と食べ始めた。
「いただきまぐらい言ってよね。」
「…、いただきます。」
昔から変わらない。
和也は溜めこみやすいから
何も気にせず
この店を続けてほしい。
あの人と夢見て
やっと建てたこの店を。
「波留。
携帯鳴ってますよ。」
和也に言われて
携帯を持ちベランダへ向かう。
「もしもし。」
「あ、櫻井です。
今日のバイトの話
いくつか探しましたよ。」
「さすが、仕事が早いねぇ。」
いつもポケットに入れている
メモ帳とペンを取り出す。
「____って感じです。
で、最後なんですけど…。
これはキツイかもです。」
メモの新しいページを開けて
どんなバイトかと聞くと
翔さんは数秒間を開けて話した。
「最後は介護の仕事です。
介護と言っても、
若い男性の世話ですけど。
波留さん経験あります?」
「一応、看護師の免許はあるけど。」
「じゃあ、問題ないです。
給料もかなりいいですし。
定時は五時なので。」
給料もいいし
五時までに帰れるなら。
それにすると返事をし
住所と名前をメモした。
「向こうに俺の名前言ったら
話は通してますので。」
電話を切り
メモ帳をもう一度見返す。
「松本潤さん…。」
歳は30代で私より年上。
和也と同じぐらいかな?
翔さんと仲いいみたいだし
安心だ。
ベランダの窓から和也を見る。
ばれませんように。