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消えた水曜日

第4章 感情の行方 _前篇_



「じゃあ、和也
 店の掃除よろしくね。」


和也には
母が骨折したから世話を見ると
初めて嘘をついた。



言い渡された住所をもとに
着いた先は
立派なお屋敷だった。



「すいません。
 櫻井翔さんの紹介で来ました。」



インターホンに向けそう伝えると
大きな扉が開き
玄関には白髪頭の男性が立っていた。




「潤の父親でございます。
 本日は遠い所からお越しいただき
 ありがとうございます。」




深々とお辞儀をする男性に
私も同じくらいの角度でお辞儀をし
自分の名前を伝えた。




「じゃあさっそく
 潤に会っていただけますか?」




「はい。
 お願いします。」




長い廊下
潤さんのお父様の後ろに付き進んでいく。
すると、
一番奥の部屋にたどり着いた。




「潤。
 入りますよ。」



ノックを一回して
ドアノブに手を掛け開けると
車椅子に乗り
こちらを見つめる若い男性がいた。




「息子の潤です。」



「は、はじめまして。」



彼はこちらを見て会釈するだけで
ひと言も発しない。
もしかして
話すことができないのだろうか。





「えっと、彼の状態は…。」



「いいよ親父。
 体はポンコツだけど
 脳は正常だから俺が説明する。」




そう言うと
深々とお辞儀をして
部屋を出て行ってしまった。
沈黙が続く中
潤さんがその沈黙を破った。




「まず、自己紹介から。
 松本潤です。
 今は下半身と右腕が麻痺しています。
 左腕も、そのうちなります。」



しっかりとした口調で
症状を説明していく。



私は聞き逃しの内容に
必死にメモしていった。
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