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消えた水曜日

第4章 感情の行方 _前篇_



_Sho side_


「アルバイト先を探してほしい?」


波留さんの口から出た
初めてのお願いは
意外なものだった。



「家計…そんなに厳しいの?」


相葉さんが目を潤ませながら
波留さんの顔を覗き込む。




「まぁ、常連だけじゃ
 やってけないですからね。」



確かにこんなところじゃ
場所的に目にはつかないし
俺みたいに寝過ごさない限り
ここに来るのは難しい。



「探すのは構わないけど
 ニノはこのこと知ってるの?」


相葉さんが聞くと
波留は左右に首を振り
窓を見つめた。




「和也には内緒にしててほしい。
 体弱いし、頑固だし。
 変な心配かけない方がいいでしょ?」




初めてこの店に来たときと同じ
あの悲しい表情を見せる。




「そっか…。
 力になりたいけど
 俺も今月ギリギリなんだよな…。」



相葉さんは財布を取りだし
中を見ると溜息をつき
また財布を戻した。



「いいのいいの!!
 夜は店があるから朝と昼で。
 何個かの掛け持ちでもいいから
 お願いできない?」



「わかりました。
 探しておきますね。」


手帳に条件を書き
鞄にしまうと
目の前に珈琲が置かれた。



「私が動くと
 和也、感がいいから気づくと思って。
 ほんとにごめんね。」



店の維持って
そんなに大変なんだ。


帰りの電車に揺られ
店の名刺と手帳を見比べ
そんなことを考えていた。






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