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消えた水曜日

第1章 ひと言の勇気 _前篇_




「うーん。
 私はいいけど、
 和也が機嫌悪くなるかも。」



夜の電車って
結構うるさいから。
それに




「まだあの事
 忘れられないだろうし。」




「やっぱそうだよね…。」


わかりやすく肩を落とし
大きなため息をついた。


でもいくら和也が
電車の音が嫌いだからって
拒否することはできないだろうし



二人で悩んでいると
微かに足音がした。




「いいですよ、別に。」




階段の方に目をやると
さっき寝たはずの和也が
だるそうにこちらによってきた。




「そのかわり
 常連客は、ここまで乗せてくること。」




「ありがとう、ニノ!」


相葉さんは立ち上がり
和也の手を両手で掴むと
上下にブンブン振り回した。


「いい加減ウザい。」



「あ、ごめんごめん。」



慌てて手を離し
頭を掻きながら微笑む。


和也が自分から許可を出すなんて
珍しいこともあるんだな。


でも昔から
お客さんのことを第一に考えるとこは
昔から変わらない。




「じゃあ、今日からよろしくね!」




相葉さんは
帽子をブンブン振って
帰ってしまった。



「たく、騒がしい人ですねぇ。」



「嬉しいくせに。」




そう言うと唇を尖らせて
私の手を掴み二階へ上がった。



「生意気なこと言ったから
 一緒に昼寝。」


昔から言葉にするのが苦手で
いつも不器用に言うから
周りから誤解されることもあるけど


何処か温かみのある言葉が
私は好きだった。
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