第3章 ひと言の勇気 _後篇_
「俺、受け持ちのクラスを
途中から引き継いだんです。
だから、全員のこと
把握し切れてなかったみたいで。」
後から産休に入っていた
もとの受け持ちだった先生に聞いたら
圭人の場合はまだ進行していて
俺が目にしていた資料より
かなり進行していた。
「一人一人と向き合ってる
フリだったんです。
そんなことで満足して
俺は、一人の生徒を傷つけたっ…。」
人と向き合うということを
甘く見ていたんだ。
「それから、怖くなって
余計なことはしない
そう思ったんです。」
ただのトラウマ。
失敗は誰にでもある
気にすんな
そんな励ましの言葉も
俺の耳には届かなかった。
「そのことばかり後悔して
生徒を傷つけそうで
関わるのが怖くなった。」
それが嫌で
俺は今日逃げたんだ。
「後悔、上等じゃないですか。」
今まで黙っていた和也さんが
腕を組み天井を見上げ
ポツリと呟いた。
「後悔があるってことは
そこに愛があった証ですよ。」
「間違いに気づいたら
もう、間違うことはありません。
貴方は、圭人君が傷ついたということに
気づいたじゃないですか。」
和也さんは
口角を上げてこちらを見ると
俺の後ろを指差した。
「じゃあ、次傷つけないように
どうすればいいかぐらい
貴方はわかっているでしょ。」
ゆっくり後ろを振り向く。
そこには、青年が一人立っていた。
成長していたってわかる。
この子は、絶対に…
「圭人…。」
「お久しぶりです。」
俺の姿を見て
涙を流すキミは
紛れもなく圭人だった。