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消えた水曜日

第3章 ひと言の勇気 _後篇_



「座ってください。」


和也さんがそう言うと
波留さんが
カウンターの椅子を引いてくれた。


「マクロビオティックと
 癒しのハーブティーです。」


目の前に出されたのは
綺麗な色をしたハーブティーだった。

少し口に含むと
ハーブの香りが心地よかった。



「ハーブティーに含まれるマグネシウムが
 精神の興奮抑制、ストレスの軽減に
 効果的だと言われてる。」



この人は心理学者でもしていたのか。
どんなに平常心を保っているふりをしても
彼に嘘は通用しないようだ。



「昨日、あなたのことを聞いて
 ひと言言わせていただきたく
 お越しいただきました。」



隣に座る竹内の方を向くと
申し訳なさそうに頭を下げ
俯いたまま前へ向きなおした。




「ここに来たお客さんには
 幸せになってもらわなきゃ
 困るんです。」



「お店の名前は涙なのに?」



そう聞くと
和也さんと波留さんは
顔を見合わせて微笑んだ。



「単刀直入に言わせてもらうが
 貴方は優しさのあり方を勘違いしている。」



俺を覗き込むように見つめ
目が離せない。



「中途半端な優しさは
 残酷なだけですよ。」



中途半端な優しさか…。



その言葉で
俺は六年前のあの日を思い出した。
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