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消えた水曜日

第2章 ひと言の勇気 _中篇_



_竹内 side_


先輩が急いで帰り
俺もそろそろなんて考えていると
先輩のデスク付近に
一枚の紙が落ちていた。


「…、TEAR?」



何かのお店の名前らしい。



「なんだそれ、
 キャバクラか?」


「先輩が行くわけないじゃないですか。
 喫茶店みたいですよ。」



他の先輩に挨拶をして
学校を後にした。


「暇だし、行ってみようかな。」



電車に揺られ
初めて見る駅へと足を下ろす。
あたりは薄暗く
目の前にはバラのアーチが見えた。




「いらっしゃい。
 …って言いたいところなんですけど
 まだ開店時間じゃなくて…。」



アーチに近づくと
薔薇の手入れをする女性が
申し訳なさそうにこっちを覗いた。



「あ、そうなんですか。」



「いいじゃないですか。
 たかが一時間前ですし
 開けてあげたら。」




バケツとモップを持った
エプロンをつけた男性が
無表情のままこちらを見た。




「うーん。
 そうだね。
 和也お疲れ、寝ていいよ。」



女の人は
店の札をopenの方へ裏返し
店を開けてくれた。



「誰かの紹介?
 それとも乗り過ごし?」



「あぁ、先輩…
 櫻井さんがこれを落としてて。」




落ちてた紙と
何年か前に撮った写真を見せると
それを横目に見ていた和也という人が
こちらに近づいてきた。



「先輩、もう少しで
 会社辞めるらしいんです。
 多分、原因はあれでしょうけど。」


「あれって?」


写真と紙を返しながら
女性は首を傾げ聞いてきた。


「あぁ…。」



こんなこと
この人たちに言っていいのか。

でも、どんな勧誘でも
もらってすぐ捨てる先輩が
この紙を持っているということは


全てを話すことにした。
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