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消えた水曜日

第2章 ひと言の勇気 _中篇_




「やっちゃいけないこと…。」



今まで抑え込んだこと。
やってはいけないこと。


「だって、今の話だとさ
 櫻井さんが勝手に
 やっちゃいけないって
 思い込んでるだけでしょ?」




その言葉が
頭の中でぐるぐる回る。

駅から家までの
10分くらいの道を歩きながら
波留さんと相葉さんの言葉を
考えていた。



「やってみるか。」


どうせ辞めるんだ。
悔いのないように
六年前の自分のように
一人一人と向き合うんだ。



〝先生の意地悪。〟



俯いていた顔を上げると
涙目の少年が
こっちを見てる。



「圭人…。」


目を固く瞑り
もう一度目を開けると
その姿は消えていた。



さっきまでの決心は
何処へ行ったんだろう。

震えが止まらない。
一人一人と向き合うことに
恐怖が湧いてきた。



「俺には…やっぱり…。」




無理だ。
一度できてしまったトラウマは
消すことは難しい。



明日が来なければいいのに。




また、そんなことを考えてしまう。




結局俺は、
六年前から
何一つ成長していない。




鞄の中から
もう何年も持っている辞表を取り出す。



「圭人。
 ごめんな。」



情けない俺で。



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