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消えた水曜日

第2章 ひと言の勇気 _中篇_




「なんでですか?」


「翔さんの学校
 聴力に障害のある子が
 通うところでしょ?
 写真見ての勘だけど。」



写真をもう一度見る。
写真の端には聴力に関する本が写っていた。



「夫婦そろって勘がいいですね。」



「夫婦…?
 あぁ、和也はそんなんじゃないですよ。」



波留さんは
俺の手からパスケースを取り
写真をじっくりと見つめる。



「聴力に難がある人はね
 目で見て状況を知るの。
 だから貴方の態度ひとつで
 貴方のことを理解しようとするんです。」



ここまで言ったらわかりますよね。
そう言って
店の開店準備を始めた。


「あの、やっぱり帰ります。」


パスケースをしまい
足早にその場を去った。


電車の中で揺れながら
さっきの言葉を
もう一度思い返す。



「そう言えば…。」




ここ最近
生徒たちは俺に話すとき
なんとなく言葉を選んでいるような気がした。


子供たちなりの
気遣いだったのかもしれない。




「あ!
 この間のお客さん!!」



窓に向けていた顔を
通路側に向けると
何処かで見たことのある人が立っていた。



「あ、えっと…。」



「あ、私服だからわかんないか。
 こないだの駅長です!!
 相葉、相葉雅紀です!」



「あぁ!
 相葉さん!」



微笑む顔は
紛れもなくあの時の相葉さん。

気づいたので安心したのか
俺の隣に座り伸びをした。



「そんな暗い顔して、どしたんですか?」



また、暗い顔してたのか。
直さなきゃな。



「あ、いや。
 波留さんに仕事の
 アドバイスもらったんですけど
 どうすればいいか…。」


今自分が思ってる事
さっきの会話を話した。

相葉さんは
少し考えるように手を顎に当て
唸った。



「じゃあさ、一度
 やっちゃいけないって抑え込んでる事
 やって見ればいいんじゃない?」
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