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消えた水曜日

第2章 ひと言の勇気 _中篇_




「ごめんね。
 結局ずっと持ってもらって。」



お店について
波留さんは
冷蔵庫から水を取り出した。



「水でいいかな?」



「ありがとうございます。」



カウンターに座ると
手際よくコップに水を入れ
俺の前に差し出した。



「あ、そうだ。」


何かを思い出したように
奥の部屋へと行き
すぐに戻ってくると
テーブルにパスケースを置いた。



「あ、これ。」



「気づいてなかったの?」




「朝、体調悪くて
 タクシーで行ったんです。」



お礼を言って
パスケースを胸の内ポケットにしまう。



「翔さんって
 学校の先生なんですか?」



「なんで、わかるんですか?」




「パスケースの写真
 見えちゃったんです。」




買ってきた食材を
冷蔵庫にしまいながら
こちらを見ずに答える。



ポケットにしまったパスケースを
もう一度取り出し写真を見る。




「これ、俺が初めて
 担任受け持ったクラスの写真なんです。」



教師になって四年目の時
初めてクラスを受け持った。
それまでは副担任として
一人一人の生徒と
向き合ってきたつもりだった。



「担任になって、
 今まで以上に熱心にして
 よく熱血教師なんて言われてました。」




「過去形なんですね。」




カウンターキッチンの
調理台に頬杖をつき
こちらを見て微笑んだ。



「世の中、
 そう甘くないですからね。」



「そっか。
 でもさ、今の寂しそうな顔
 生徒に見せちゃダメだよ。」


まただ。
俺はまだ意味が解らなくて
思い切って
聞いてみることにした。



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