第2章 ひと言の勇気 _中篇_
放課後になり
そそくさと片づけを済ませ
全ての誘いを断り駅へ向かった。
「こんにちは。」
駅のホームで
椅子に座り俯いていると
上から声が聞こえてきた。
「へ?
あ、波留さん。」
大きな袋を両手で持ち
真っ黒な服を着た波留さんがいた。
「よくわかりましたね。」
「負のオーラが漂ってきて
覗き込んだらね、」
笑いながら
両手に持つ荷物を
俺の隣の椅子にドカッと置き
ハンカチで汗を拭きとった。
「そんなに俺、
不幸に見えますか?」
「冗談ですよ、
あ、そうだ。
貴方に渡したいものがあるんだけど
水曜日にでも来てください。」
そう言って微笑むと
電車が到着するアナウンスが
ほぼ無人の駅に響き渡った。
「あの、
今日じゃダメですか?」
「ん?
いいけど、和也いないよ?」
「いいんです。
お願いします。」
電車が到着して
慌てて荷物を持つ彼女から
全ての荷物を奪うように持った。
「いいですよ、私持つから。」
「どうせ行く道一緒ですし
任せてください。」
波留さんは
諦めたかのように苦笑して
電車へと乗り込んだ。
田舎だから
人は全然乗っていなくて
ほぼ貸切の車内で
二人掛けの椅子に座った。
「そう言えば、名前…。」
「あ、櫻井です。
櫻井翔って言います。」
「じゃあ、翔さんって呼びますね。
私のことも下の名前で呼んでるし。」
気づかなかった。
無意識に呼んでいたみたいだ。
きっと、
彼女に何処か
心許せる部分があるからだと思う。