第11章 紹
嫌がる女の手を引いて。
この町を歩いても。
そんな日常茶飯事は見て見ぬフリ。
そりゃ、犯罪が減るなんて。
無くて当然。
「観念しなせェ」
「嫌」
「遅れた理由、土産、取りに帰ったからって聞きやしたけど?」
「それでも、」
回答は待たずに、チャイムを押して。
逃げられないように掴んだ手を、強く握る。
誰が出てきても。
こっちは臨戦態勢だ。
「はーい、今、開けまーす」
パタパタと足音が聞こえて。
最初に顔を出したのは、メガネだ。
「朱里さん!」
満面の笑みで出迎えられて。
朱里は表情を崩す。
「今回の任務は長かったんですね。遊びに来ないので、心配してたんです」
メガネは俺に気づかぬ様子で続けた。
「今、銀さんも神楽ちゃんも留守なんです。上がって待っててあげてください。きっと喜び……」
ここで初めて俺の存在を認識して。
「お、沖田さん……」
俺の名を口にして。
握った手に視線を移した。
「え……アレ?……二人、もしかして…」
しどろもどろになる様が滑稽だが。
餌を撒くには、役者が足りない。
「見ての通りでさァ」
俺に言葉に、朱里は強く腕を引いたが。
そんな簡単に逃がしゃしねェ。