第10章 文
正直、もっとどぎついこと言われるんじゃないかと。
期待する自分がいた。
朱里ちゃんのこと、見括ってたな。
そんなに、弱い女じゃなかったわ。
俺が縋る側?
しないよ?
俺ァそんなこと。
笑って送り出して、やろうじゃねーか。
最後の望み、叶えて。
綺麗さっぱり、これで終いだ。
さっさと、好いた野郎のところに行けばいい。
でもよ?
俺達のコト、無かったことにだけは。
しないでくれねェか?
こんな関係だったけど。
万事屋のこと、忘れないでくれ。
新八も神楽も。
俺も含めて。
朱里ちゃんのこと、気に入ってたからよ。
街で会ったら挨拶するくらい、してやってくれよ。
恋路を邪魔したりしねェから。
同じ釜の飯食って。
少なからずも、同じ時間を過ごした。
同じシャンプーの香りも。
眠れねェ夜も。
今となっては、いい思い出だ。
愉しい時間だった。
俺達は、忘れねェから。
次に逢うときは、俺達が驚くような。
いい女になっててくれよ。
あのとき口説けば良かったって。
後悔するような、女に。