第9章 秘
「どーした?今日はよく喋るじゃねーか」
昼下がりにフラリと現れて。
いつもの場所で、いつもの体育座り。
普段はそこで、膝に顎のせて。
微睡んだりしてんのにな。
今日は、どーしたよ?
「お前、まさか…男でもできたか?」
アレ?
何、この微妙な空気。
銀さん、間違ったこと言っちゃった?
だって、無駄にフワフワした感じがするけど。
「坂田さんなら、どう思いますか?」
例題出して、俺の答えを求めるって時点で。
男の意見を求めてる時点で。
そう思うのが自然だろ。
まぁ、俺のは模範解答にもなんねェと思うけど?
「良かったじゃねーか」
オッサンの相手してるより。
全然、らしいっつーか。
健全だろ?
「今度、紹介してくれよ」
引き攣る頬を誤魔化して視線を向ければ。
あのときと同じ表情で。
キミは、小さく笑った。
これで、俺はお役御免か?
『いいひと』がいる女が。
それ以外の男と、床を一緒にするなんて。
たとえ、男女の仲じゃないとしても。
そんなん、銀さんは許さないからね。
銀さんが彼氏の立場だったら。
相手の男、殺しちゃうよ?
ドラム缶に入れて、海に沈めるわ。
俺の女に何すんだって。
抱き枕役って何だって。
間違いなく………俺が言われる側じゃねーか。