第8章 再
「ただいまヨ~」
僕と銀さんが睨みあったままの部屋に。
神楽ちゃんと朱里さんが戻ってきた。
よく見ると朱里さんは。
違和感が残るものの、ぶかぶかの服を上手く着こなしている。
着物は丈が長すぎるから。
羽織ることができないのかな。
前に神楽ちゃんが銀さんの服を着たときみたいには、ならないと思うけど。
でも。
胸元、少し気にしてください。
銀子さんみたくなってます。
……僕には刺激が強すぎますからァァァ!
「キミ、ちょっとこっち来なさい」
僕の心を知ってか知らずか。
銀さんは、朱里さんに手招きして。
「お前、こんなん駄目だろーが」
ごく自然な動きで。
開いた胸元を隠すように留め具を掛けて。
「男は皆、ケダモノだよ?」
まるで意識してないような。
そんな感じで。
「メガネが見てるからね」
オイィィィ!
何、チクってんだァァァ!
「女のコなんだから、気をつけなさい」
厭らしさの欠片もないまま。
何事もなかったような。
手馴れた感じは。
見てるこっちが、恥ずかしい。
「ありがとう、坂田さん」
お礼を言った朱里さんは。
少し顔を赤らめていて。
僕に対してじゃなく。
銀さんの指先に対してである事実。
その甘酸っぱい感じ。
見てるこっちが、恥ずかしい。
何?
このラブコメチックな空気。
月9?
オッサンと女のコの恋?
爆死モノだよ、笑えねェよ。
甘い匂いがプンプンするよぉぉぉ!
目の前のフワフワと。
朱里さんを交互に見て。
そこから銀さんに視線を移して。
「親子みたいですね、お二人」
僕はわざと、そう表現した。
僕が思っている以上に。
銀さんは『女の扱い』に慣れていて。
銀さんの『彼氏力』は高いのかもしれない。
……それとも『お母さん度』?