第7章 眠
幕退きは、案外あっさりしていて。
「で、どうなの?」
何か、判ったの?
俺から常に芳香している、香りの正体。
お前にしか嗅ぎ分けられない、俺の匂い。
髪からですか?
何処からですか?
一番気に入った、アソコですか?
楽しんでいただけましたか?
こっちは全然楽しくねェぞ。
平常心のフリして、かなり恥ずかしいわ。
変な声、出しちゃった時点で。
銀さんの心は、羞恥一色だからね。
俺ァ、二度と女に後ろは譲らねェ!
暫く、立ち直れないよ、コレ。
「………正体」
「ん?」
「不明、です」
「そうか」
「お願い聞いてくれて、」
「………」
「ありがとう、坂田さん」
「ああ」
真っ直ぐに向けられた視線から。
僅かに目を伏せて。
捕り物劇の終わりを悟る。
散々振り回されて。
それが心地好くなって。
目が離せなくなって。
追いかけて。
捕まえたと思ったら。
やっぱ、逃げんのか。
俺ァ、本物のお巡りさんじゃないし。
お前も、本物の悪党じゃないし。
まぁ、当然の結末だ。
あとは、俺の布団で眠るなり。
俺の睡眠不足が続くなり。
成るように成る。
「で?これでお前の願いは終いか?」
どうせ終わらせるなら綺麗にしようや。
真っ新にして。
後腐れがないように。
全部吐き出して。
お互い、未練なんて残さないように。
その肚にある、もっとドロドロの。
隠しておきたいモノ。
恥ずかしがらずに見せろって言ってんだ。
まだ、俺に言いてェこと。
あるよな?