第6章 戯
その張り詰めた気配は。
日の差し込む部屋に酷く不釣り合いで。
淫靡ではないけれど。
纏う空気は健全でもない。
好きなようにさせて。
それで満足するなら、と。
その願望が成就するなら、と。
俺はそれを、渋々承諾した。
「その髪に…触れて、みたくて」
そりゃ、あんな声出るよね。
「お前がしてェなら…………え、何?」
間抜けな感じになるよね。
ソファに向かい合って。
お前が口を開くのを根気強く待って。
やっと紡いだ言葉が、それ?
あんな思い詰めた表情みせて。
俺に求めるモノが、それ?
つーか、俺っていうか。
俺に付属してる、コレ?
「甘い香りの…正体が知りたい」
えーと…。
自然と出てるというか。
糖分過剰摂取が原因というか。
お前だけにしか、感知できてないというか。
正体は、加齢臭的なものというか。
髪の毛から発しているモノではなくて。
だって、シャンプーはTSU○AKI使ってるから。
お前の言う『甘い香り』が。
俺には判んねェ。
他の奴等と違うのか?
正体があるなら。
俺が教えてもらいてェんだけど。
「お願い、聞いてもらえますか?」
想像の斜め上から言うね、お前。
その上目遣い、外で使わない方がいいぜ。
あざとい表情で、男心を揺さぶって。
お願い聞かせる威力あるから。
捕らえたつもりで捕らわれて。
ソファの背凭れを挟んだ後ろに立つ気配。
どんなコトするつもりか。
お手並み拝見、致しましょうか?