第6章 戯
「ふぅ」
溜息にも似た。
意を決して吐き出された息に。
自然と背筋が伸びる。
肩に置かれた掌。
外の喧騒が遠くに聞こえて。
耳の中に響くのは己の心音。
「ありがとう、坂田さん」
己の姓を呼ぶ声が右の耳を擽って。
気配が濃くなる。
肩に置かれた掌が微かに動いて。
俺はゆっくり目蓋を閉じた。
鼻先が、所々を。
否応なしに触れる。
「ん…」
甘く漏れた声。
肌に触れる指先。
こんなことされて。
内心、喜んでる自分がいる。
『何でこんなことしたいの?』
オッサンには、キミのその行為が。
オッサンには、キミのその欲望が。
正直、理解できません。
「甘い……」
そう呟いて。
キミは俺の髪に。
掠めるような、口づけを落とした。