第1章 猫
「いつ帰ってくるんだか…」
正直、皆目見当もつかねぇ。
ちょっと行ってくると。
近所のコンビニに行くみたいに出掛けて。
「彼此、二ヶ月も帰ってこねぇんだわ」
俺は猫を抱き上げて。
左腕に抱える。
「こんなにイイ男放って、何処行っちまったんだか」
捜すことも。
迎えに行くこともできないもどかしさ。
「待つっていうのは、苦しいもんだな」
溜息混じりに呟けば。
猫は鼻を俺の胸に押し付けて。
それから頬を擦り寄せる。
「やっぱ、どっかの誰かに似てるわ、お前」
甘えてんのか、慰めてんのか。
猫の仕草は解読不能だが。
胸に凭れて頬を擦り寄せる感じは悪くない。
そのまま背中を撫で続けると。
「にゃー」
と気持ち良さげに小さく鳴いて、猫は目を閉じた。
「夜行性って言うわりに、寝付きいいのな…」
暫く背中を撫でながら、窓の外の月を見上げる。