第5章 香
あのときの銀さんは。
たぶん、朱里さんを探しに行ったんだと思う。
僕と神楽ちゃんにお金を返すように言っておいて。
自分も家を出て行った。
ちゃらんぽらんだけど、人の痛みには敏感で。
そういう人を放っておけない性分だから。
頭で理解するより先に、身体が動いたんだろう。
「朱里さんは居ますか?」
前回と同様に、真選組屯所のやってきて。
僕と神楽ちゃんは、山崎さんを前にしていた。
「朱里さんは居ないよ。暫く戻らないって聞いたけど、何か用?言伝てがあるなら聞くよ」
たまたま屯所を出てきた山崎さんは、僕等を門から少し離れた場所に招いてから口を開いた。
「居ないって、また何処かの星に行っちゃったんですか?」
「俺も詳しい場所は知らないけど、さっき飛び立ったみたいだよ」
「暫くって、いつアルか?」
「前回よりも長いんじゃないかな…たぶんだけど」
「………」
多すぎる依頼料を返すのに、二週間要した。
その倍額を返すには、倍の時間が掛かるんだろうか。
「副長も気にしてたみたいだけど、朱里さんに何の用があって探してるの?」
この人なら、協力してくれるかもしれない。
でも、これは僕等の。
万事屋の問題だ。
誰かに頼るなんて、間違ってる。
「成り行きです」
「成り行きアル」
僕と神楽ちゃんの声が重なって。
山崎さんは驚いたように笑った。
「君達は、信用できそうだ。さっきは長くなるって言ったけど、朱里さんはこの国に居るよ。江戸には居ないけどね」
「どういうことですか?」
「極秘任務だって」
「極秘じゃなくなってるアル」
「……極秘じゃなくなったことを、副長には極秘にしてくれれば大丈夫」
「極秘にしておいてやりてェが…」
声に視線を向けると、門前に土方さんが立っていた。
「まだ諦めてねェのか、てめェ等は」