第5章 香
「暫くって、どれくらいですか!?」
ここで引き下がるわけにはいかない。
妙な使命感で、僕は絶対にお金を返さなければと思っていた。
「義弟よ、一体、朱里に何の用だい?」
「義弟じゃねェェェ!」
近藤さんは、僕の肩に手を置いて。
親身になってるフリをする。
「依頼内容の再確認アル。預からなくていいアル、帰って来たら連絡するヨロシ」
神楽ちゃんは、鋒を沖田さんから近藤さんへと移動させて言い放った。
「是非、そうしてください!」
神楽ちゃん、ナイス判断!
「解った。戻ったら、必ず連絡する」
お妙さんへのアピールを忘れずに頼むよ、と言ってる時点で…信用できないけど。
結局、その2週間後に近藤さんから電話があった。
対応は僕がしたんだけど。
その連絡は無意味になった。
何故かと言うと。
その日、銀さんが再び同じ依頼を受けたからだ。
あの壱萬円は、銀さんの机の右の引き出しに終ってあって。
二度目の依頼を受けた夜、銀さんが直接返してくれた。
四度目の依頼を受けたとき。
「自分で布団買った方が、安くね?」
壱萬円の報酬を払う朱里さんに、銀さんが伝えて。
五度目は、依頼ではなく。
銀さんが朱里さんを連れ帰ってきた。
「何か…俺の布団がお気に入りらしいんだけど?」
え……。
加齢臭漂う、あの布団が?