第4章 生業
「多いな…」
銀さんは顎に手を当てて呟く。
「おめェ、コレ、回転ベッドある部屋に連泊してもお釣りがくるぞ」
僕等は、テーブルの上の弐萬百伍拾円を見ながら。
この依頼に見合った報酬かを考えていた。
「ベッドが回るアルか?」
「回るんだよ。すげェだろ?」
「回ってて寝れるアルか?」
「回ってる間は寝ねェんだよ。大人の世界は回り続けんだよ」
「マジでか!」
「つーか、何教えてんだてめェはァァァ!」
何を神楽ちゃんに教えてんだァァァ。
そんな汚い世界、まだ早いんだよ。
そんな爛れた世界、知らなくていいわ!
「銀さんが受け取った報酬、やっぱり…絶対多いですよ。足りなかったらって言ってたけど…」
「毟り取るヨロシ」
「イヤ、多いって話をしてるよね?」
銀さんを横目に見ると、何やら思案顔で。
「どーするアルか?銀ちゃん」
神楽ちゃんは、テーブルの上の報酬を見やる。
報酬は合計で、弐萬参千百伍拾円あって。
参千円は、早朝に片付けた依頼分だ。
「てめェ等、コレ、返してこい」
銀さんは壱萬円を僕に手渡して。
「俺ァ、ちょっと出掛けてくるから」
そう言いながら、残りを懐にしまう。
「三倍に増やしてくる」
三倍って何だァァァ!
やっぱりパチンコか?
増えるなんて奇跡、あるわけがねェェェ!
「銀さんも一緒に行ってくださいよ」
僕の言葉をスルーして、捨て台詞を吐いて。
振り返ることなく、出て行った。
「今日、新台入替なもんで遠慮しとくわ」