第1章 猫
「選り好みなんてしてちゃ生きていけねーよ?」
コトリと音を立てて皿を置く。
猫は俺の動作と皿の中身を確認して。
やっと皿に顔を近付けた。
「お気に召しましたか?」
ピチャピチャと静かな室内に音が響いて。
「にゃー」
と、猫は鳴いた。
俺は、その鳴き声を勝手にお礼と決めつけて。
「お粗末さんでした」
そう答える。
すると、猫は音もなく立ち上がり。
俺の脚に擦り寄った。
足元からゴロゴロと音が聞こえる。
「お?何だ?ちょっと銀さんのこと好きになったか?」
それともただのマーキングか?
猫がピタッと動きを止めたところで、その頭に手を伸ばし。
艶々の毛を撫でてやる。
最初、迷惑そうな顔をして。
それから目を細めて、再びゴロゴロと喉を鳴らした。
「可愛い顔もできるじゃねーか」
頭を撫でていた手を、首の辺りに移動させ。
暫く猫と戯れた。