第4章 生業
艶々な黒毛は、あの人の髪に。
蒼い目は、あの人の瞳に。
人との距離感も。
人懐っこい立ち振舞いも。
何となく似てる。
「拾ってきたなら、尚更だよ」
僕は、あの日を思い出して笑ってしまった。
あの日の出来事があって、今があるんだけど。
万事屋として、色々な依頼があった中で。
あの人の依頼はちょっと毛色が違った。
銀さんは、酔って迷惑を掛けたみたいだけど。
神楽ちゃんは寝てただけ。
僕は報酬を受け取っただけ。
遡って説明するとこうだ。
ある晩、いつものように酔っ払って銀さんが帰宅すると。
外階段に人が座っていたらしい。
数段上ったど真ん中に座っていたので、恐る恐る声を掛ける。
「あのォ、ちょっと退いてもらえます?」
真っ黒な装いから、恐怖で声が震えたと言っていた。
死神に介錯頼まれたりして。
色々トラウマになってるのかな。
真っ黒な人は、暫く動かなくて。
数分が数時間に感じたって。
背中に汗が伝い始めた頃。
「スミマセン…気にせず跨いでってください」
女の声で、謝られたと。
『何で自分家入んのに、俺が遠慮しなきゃなんないわけ?
俺の足が人より少し長くても無理じゃね?
股が裂けるだろーがァァァ!!
しかも、頭に俺のキンタ○当たっちゃうよね?
で、変質者とか、猥褻物陳列罪とか言われんだろォォォ?
冗談じゃねェ!
素直に退いてくれりゃァいいじゃねぇかァァァ!
俺は家に帰って寝てェんだよォォォ!』
後になって、銀さんはそのときの心境を語っていたっけ。
勢いはあるけど。
結局はいつもの感じで。
「つーか、気持ち悪いんですけど…何か…出ちゃうかも…」