第4章 生業
「にゃー」
さっきまで銀さんのお腹の上にいた猫。
今は足元で、僕を見上げている。
「いちご牛乳でも飲む?」
声を掛けると、項垂れてしまった。
昨日、一緒に飲んだって話も疑わしい。
「やっぱり、嫌だよね」
定春みたいに、いちご牛乳で大きくなっても困るし。
とりあえず、お水を出してみた。
猫は鳴いてから水を飲んで。
毛繕いを始める。
「君、本当に綺麗だなぁ…」
こんな台詞、リアルじゃ言えないけど。
言う相手が居ないけど。
ヤバいよ、涙で視界が霞んでるよォォォ。
メガネの下を拭って、猫を見ると。
蒼い目が、真っ直ぐに僕を見ていた。
「目も綺麗だね」
猫は鳴いて、前足で顔を洗う。
仕草も、猫なのに優雅に見えてきた。
やっぱり、お金持ちの家の猫なのかな…?
だから、上に乗っても怒らなかったのかな…?
お金にがめつい人だからなぁ。
楽して稼げるなら、多少のことには目を瞑るタイプだし。
許せる範囲だろうし。
それでも。
「銀さんが君を気に入ったの、何となく解る」
だって、君は。
「朱里さんに似てる」