第31章 眼
「だから、トシが言ったんだよ。部屋から出たら危ないって」
ゴリラの話は、空想みたいで。
現実離れしているのに。
現実として、目の前に叩きつけられてる。
「お前らが朱里ちゃんの裸見たら、マジ殺すよ?」
「それは総悟が真顔で言ってたから、知ってる」
「原田が戻ったときって、普通に人間だった?」
「普通って?」
「普通は普通だよ。尻尾とか、」
「そんなもの、原田についてたら気持ち悪いだろ」
ゴリラは想像しちまったと言って、ゲラゲラ笑ってるけど。
俺には、腑に落ちない。
一人はあっさり人間に戻ったのに。
朱里ちゃんは猫のままだ。
一週間の内に、二回、人の姿に戻った。
確かに、どちらも着衣がない。
一回目は、暗がりで見えなかっただけか。
耳と尻尾に気付かなかった。
二回目の、今回は。
耳と尻尾がある。
つーか、猫に逆戻り?
あのときは、夢か現かなんて。
悠長に思えたけど。
今、朱里ちゃんは萌え要素を兼ね備えた。
かなりヤバイ格好、してるってコトだよな?
「悪ィ、掛け直す」
十数分の、この間に。
また、猫に戻っちゃうかもしれねーってコトだよな?
ちゃんと確認しねェと。
あの猫が、俺の朱里ちゃんだって。