第31章 眼
「おい、万事屋?聞いてる?」
電話の向こうのゴリラは。
いつもと変わらぬ様子で。
俺は、受話器を握ったまま。
襖の向こうに視線を向ける。
アレが、朱里ちゃん?
さっきまで、黒猫がいて。
女四人が押し掛けてきて。
次に見たら、猫耳と尻尾がついた女が寝てて。
顔は見てないけど、好いた女を見間違えるはずなくて。
「……朱里ちゃんに、何があった?」
姿形は違えど。
怪我をしている様子はない。
飯も普通に食ってたし。
猫ってだけで。
「朱里が一週間程前から、行方不明……というか姿を眩ました」
「ちょ、詳しく。任務行ったところから詳しく話せ」
「お前だから言うが…………」
ゴリラが語った内容は。
赴いた惑星での、会食の席で。
食べた料理に細工があって。
同行した原田と朱里ちゃんが。
翌朝、猫に変身したという、ふざけた話。
同じく同行したジミーが。
その日の内に、地球に連れ帰って来た。
「で、それが?」
「十日前だ」
こっちの言葉は理解してる、二匹の猫を。
屯所の部屋から出ないよう、言って聞かせて。
その翌日に、原田が。
あっさりと、人の姿に戻ったと。
戻ったとき、真っ裸だったって聞いて。
目の当たりにした後だけど、血の気が引いた。
他の男に見られるなんて。
そんなん、銀さん許しませんよ。