第31章 眼
電話の呼び鈴で、我に返る。
音に驚いたように身動ぎして、朱里ちゃんは猫のように身体を丸めた。
電話が先か、朱里ちゃんの顔を拝むのが先か。
数秒の思案ではあったけど。
煩いといった素振りで、着物にくるまる姿に。
電話が先と、判断する。
「はい、万事屋です」
「万事屋?俺、俺」
「何、オレオレ詐欺?」
「違うよ、俺、俺」
「今、立て込んでるから、他をあたってくんない?」
「久しぶりなのに、冷たくね?」
「俺、友達にゴリラいねェし」
この状態で。
何故、ゴリラから電話?
「じゃーな」
いたずら電話と、勝手に判断して。
受話器を思いっきり投げた。
ージリリリリリリ ジリリリリリリー
再び、けたたましく鳴る電話。
絶対、ゴリラだが。
客でないとは、言い切れない。
「はい、万事屋……」
「切るなんて、」
「つーか、用件は?マジで、立て込んでるんだわ」
「それはスマン。お前のところに、朱里行ってねェか?」
「こっちが聞きてェよ。いつになったら返してくれんだ、オイ」
「行ってねェか……」
「人の話を聞け」
俺の回りは、本当、人の話を聞かない奴ばっかだな。
「猫は?」
「は?」
「黒猫、見てないか?」
「…………」
見たというより、預かってますケド。
新八が世話してる、アレ。
朱里ちゃん!?