第30章 探
「私達を頑なに家に上げたくないようだけど、何か疚しいことでもあるのかしら?」
じゃあ、逆に聞きますけどね。
何でそんなに、食いついてくんの?
普通の黒猫に。
艶々の毛並みが綺麗ではあるけど。
手触りが、俺のお気に入りではあるけれど。
「理由?そんなの、簡単じゃねーか…」
てめェ等を、家に上げたくねェからだ。
俺は二度寝がしてェんだ。
だから帰れ。
猫なら『写真』撮って送ってやるから。
ベストショットを厳選してやるから。
もう、それでいーじゃん。
「猫が怖がるから、帰ってくんない?」
敷居を跨ぐ前に、引き戸を閉めて。
鍵を閉めてしまえば、終わると思ったのに。
「逃げんのか?」
引き戸が閉まらないように足を置き。
お妙が俺を見上げる。
「何を隠してんだ?」
何をって、何も隠してませんケド?
女に隠し事したって、バレるし?
「疚しいこと、あるんだろーが!」
右フック、鳩尾に入ったァァァ!
「グフッ……テメ、ふざけんな!」
人が下手に出れば、手荒な真似しやがって。
何でも拳で解決できると思ってやがる。
「フフ、お邪魔しまーす」
軽く、俺の言葉をスルーして。
うずくまる俺の横を、四人の女が通りすぎる。
猫、逃げろ。
そいつらは危険だ。
四人集まれば、何とかの知恵って。
マジ、危ねェから。