第29章 昧
最初はグー。
毎度の流れと勢いで。
この一手に全てを賭ける。
負けたら、朝まで嫌がらせ。
してやるから、覚悟しろよ。
初戦は、相子。
全員が、パー。
二回戦目。
俺が、グー。
新八が、チョキ。
神楽が、パー。
三回戦目。
俺が、チョキ。
新八と神楽が、パー。
「アレ、何コレ。俺、一抜け?」
もっと、接戦になるかと思いきや。
随分あっさりと、勝ってしまった状況に。
気張っていた気持ちが、安堵に変わる。
「坂田さん、一番」
素直に喜んでくれてる顔。
さっき、言ったじゃん。
『勝って』って。
ありがとう、神様、仏様。
彼女の極上の笑顔、頂きました!
このまま二人で寝るが、ファイナルアンサーで。
それでいいと思います。
背後で、新八と神楽が接戦繰り広げてるけど。
朱里ちゃんが一番端で。
俺がその隣で。
それ以外って構図で、問題ないと思います。
「キャッホー」
奇声に振り向けば。
高く振り上げた拳が視界に入る。
ピョンピョン跳ねる神楽と。
床に突っ伏した新八。
「勝負あり、か?」
「勝利の女神は、私に微笑んだアル」
「じゃあ、神楽が俺の隣で」
「何言ってるアルか、銀ちゃん」
「その隣が、新八な」
布団を指差して、一つ頷く。
そりゃ、ガキ共が納得しないって判っちゃいるけど。
俺たちの言い争う姿を見て。
心底楽しそうに笑う朱里ちゃんの顔。
俺は結構、好きなんで。