第29章 昧
勝敗を決めるのは。
いつもと同じ、一回勝負のジャンケン。
和室の真ん中右側の布団に朱里ちゃん。
襖のこっちに万事屋の面子が。
定春が鼻を鳴らして、俺たちに冷めた視線を投げた。
お前はいいよな。
モフモフという武器を持ってて。
女子子供が大好きな、最強の武器じゃねーか。
現に、今、モフモフされてるもんね、朱里ちゃんに。
羨ましいわ。
「定春も一緒に寝るの?」
狭いよね?
入れないよね?
狡いよね?
そいつジャンケンできねーのに。
無条件に甘えちゃってさ。
「……定春ぅ、お前はこっちだよな?」
腹の底から出した声に、怯えたように後退りして。
尻尾が垂れ下がる。
「降参か?」
お前の御主人様は誰だ?
朱里ちゃんと同じ布団で寝ようとは。
獣の分際で100年早いわ!
つーか、新八と神楽も。
ジャンケンしないで、譲ればよくね?
もっと気を遣えばよくね?
「ジャンケン、すんの?」
「当然アル」
「今日は負けませんよ」
何で退かないの、コイツら。
どんだけ隣で寝たいの?
どんだけ邪魔するつもりなの?
「朱里の隣に寝るのは、私ヨ」
それ、俺のセリフじゃね?