第28章 常
「湯船に鼻血垂らすの、やめてくんない?」
妄想炸裂中の新八に、蹴りをくれて。
女湯に聞き耳を立てる。
時折聞こえる、銀ちゃんと坂田さんの声に。
ドキドキしてる俺の方が、中二男子だ。
「銀ちゃーん、私たち、もう出るアル」
カポーンという音を残して、静まり返った女湯。
取り残された、男湯の俺と新八。
「俺も出るわ。お前は出血多量で倒れる前に、どーにかしなさい」
若いっていいね。
でも、俺の朱里ちゃんオカズにして。
変なコト考えてたら、殺すよ?
「早くしないと、置いてくからな」
慌てふためく新八を横目に。
俺は脱衣所へと、足を向けた。
「風呂上がりは、格別」
パンツ一丁での、アイス。
二口食ったところで、茹で蛸みたいな新八が脱衣所に戻って来た。
「大丈夫なの、お前」
「最後に水風呂入ってきました」
それでも、真っ赤。
本当、若いって。
「お前も食うか、アイス」
「頂きます」
パイナップル味のアイスを差し出して。
軽く肩を叩く。
「急げ。女子が待ってる」
俺は完食したアイスの棒を、ゴミ箱に放って。
着々と、服を着る。
家に帰ったら、歯磨きして。
寝床の取り合い。
タイムリミットまで、あと僅か。