第28章 常
女子が洗面所を占領している間に。
和室に布団を四組敷く。
「ジャンケンするアル」
やっぱり?
当然のように、譲るって選択肢はないんだ?
俺、一緒の布団で寝ようと思ってたんですけど?
「不公平アル」
そう言って聞かない神楽は。
どんだけ朱里ちゃんのこと、好きなんだって話で。
布団は人数分敷けと。
吐き捨てるように言って、洗面所に向かった。
「僕たちらしくて、いいんじゃないですか?」
さっきまで、真っ赤だった新八は。
一番端の布団のシーツを調えながら。
やっぱり楽しそうに笑っていて。
「汲んでくれてますよ、朱里さんも」
大きな伸びをしてから、和室を出て行った。
入れ替わりで部屋に入って来た朱里ちゃんは。
「ジャンケン、勝ってくださいね」
俺の耳元で囁いてから。
小悪魔的な笑みを残して、荷物を移動させる。
「責任重大だわ、コレ」
誰が勝っても、負けても。
恨みっこなし、なんて。
それって、嘘じゃん?
つーか、全力で恨むわ、俺。
好いた女を見送る夜に。
別の布団で寝るなんて。
隣にすら、寝れないなんて。
それ、駄目じゃね?
神も仏も信じてねェけど。
今晩ばかりは、縋りたい気分だ。