第28章 常
「小さい頃、こうやってパピーと馬鹿兄貴と、マミーのためにご飯を作ったことがあるネ」
俺と新八の間で、神楽が言う。
凄い勢いで大根をすりおろしながら。
「ちょ、何?よく聞こえねェんだけど?」
神楽の隣の新八が、音程の定まらない鼻唄を奏でる。
イヤ、マジで、半分くらい聞こえねェって。
「今日は、あの頃みたいで楽しいアル。みんなで料理っていいアルな」
「炊事当番表、変更するか?」
「嫌アル。銀ちゃんズルするつもりネ」
「しねーよ。人間、白米と卵だけじゃ、生きて行けねェからな」
「仕方ないアル。レパートリー増やすから、料理の本を私に貢ぐとヨロシ」
「無駄遣いじゃねーか」
俺の言葉に頬を膨らませた神楽。
気にせず音痴の新八。
指示を受けて、ハンバーグの種を捏ねながら。
お手伝い感が拭えない、夕方を過ごす。
作るのは朱里ちゃんだったはずが。
俺たちがもてなしたくなった結果が、コレ。
「どうですか?」
部屋を片すと言って、その場を離れた朱里ちゃんが。
入り口から顔を出して。
クスクスと笑って。
「親子みたい」
さっきしてくれた三角巾。
四人、お揃いの。
でも、親子はないだろ。
こんな大きいガキ、銀さんにいたら事件だよ?
せめて年の離れた兄弟だろ?
アレ?
その場合の朱里ちゃんって、どの立ち位置?
その位置によっては、親子でもいいなんて。
現金にも程があるって言われても。
甘んじて受けますけど、何か?