第3章 食
ドッグフードはお気に召さないらしい。
猫だから?
犬専用なんて、誰が決めたんだよ。
結構、美味しく頂けますけど?
機嫌を損ねて、そっぽを向いた猫と。
卵かけられご飯を仲良くシェアすることになった。
猫って、生卵イケるクチなんだ。
白米と卵しかねぇから、どうしようかと思ったわ。
「醤油、もうちっとかける?」
「にゃぁ」
「体に悪いから、一滴な?」
「にゃ…」
「え?足りない?」
「……」
「しょーがねェな。ちっと待ってろ…」
俺は立ち上がって、冷蔵庫からめんつゆを持ってきて。
猫の皿に数滴落とす。
「こっちのが、鰹出汁でいいだろ」
俺と皿を交互に見て。
昨夜と同じように、猫は皿に顔を近付けた。
「何かよォ、前から一緒に住んでるみてーだな」
昨日遇ったばっかなのに、不思議なもんだ。
言葉が通じないことが。
今の俺には丁度良い距離感なのかもしれない。
起こった出来事を曖昧にするには。
都合がいい。
自然と出るよな、こんな言葉も。
「ありがとな」