第25章 傍
「ご飯ですよ。朱里ちゃん、手、洗ってこい」
盆に、丼二つとスプーンを二個。
一緒にお茶を用意して。
向かい合って、手を合わせる。
「熱っ」
「オイオイ、大丈夫か?」
「大丈夫、です」
「身悶えちゃう?」
「それくらい、美味しい」
飲み屋に居合わせた小料理屋のオヤジ、ありがとう。
オヤジの言葉通り、彼女の胃袋鷲掴みできました。
絶対落とせるって、言ってたもんな。
信じて正解だったわ。
「いいお嫁さんに、なれますね」
「…………え?」
「料理上手、最強装備」
「………俺、嫁側?」
「駄目ですか?」
「駄目じゃないけど」
茶漬け食いながら、話す内容か?
つーか、朱里ちゃんは、そういうスタンス?
今の会話だと、俺、別の誰かと祝言あげることになるよね?
朱里ちゃん、別の誰かと祝言あげるつもりだよね?
恋仲になったけど、結婚は別ですか?
未来予想図描いてんのは、俺だけか?
そりゃ、主夫になっちゃうかもって思ったけど。
朱里ちゃんは『坂田姓』になる体で、考えてたわ。
「朱里ちゃん、銀さんのところに嫁にこないの?」
「……え?」
「俺、貰う気満々だったんですけど。結婚は別?要らなくなったら、ポイ捨て?」
「……そうじゃない、けど」
「大事にするよ?」
「……いいの?」
「何が?」
「ずっと、隣に居て、いいの?」
頬に、飯粒くっつけて。
色気の欠片、微塵もない状態なのに。
泣き笑いの表情。
女っぽくていいわ。
行くときも、イクときも、逝くときも。
全部一緒がいい。
他の誰かに譲るなんて考え。
毛頭ないし、もう手放せないし。
「息絶える瞬間まで一緒がいいな……」
おとぎ話みてェな終わり方。
それが理想像って言うなら。
叶えられるよう、善処します。