第24章 呼
「……銀さ…ん……」
微かな呼び掛けに、身体が反応する。
俺の上で眠る、朱里ちゃんの寝言。
初めて呼ばれる響きに、一瞬、息が止まった。
どんな夢見て、どんな顔してんの?
つーか、直接呼んでくれていいから。
「呼んだ?」
「坂田さん?」
「うん」
「……夢?」
「うん」
「夢……」
「うん」
腰を抱いてた腕を、片方背中に回して。
その重みを確かめるように、力を込める。
「坂田さん」
「ん?」
「…………」
「何、寂しくなっちゃった?」
「……はい」
素直な朱里ちゃんの頭を撫でて。
「俺も寂しいから、一緒だな」
顔が見えるように、少し上半身を起こす。
寝起きの気怠さに、涙目。
本当、可愛くて堪んねェ。
「一緒?」
「たぶん、今回は一緒」
「じゃあ、我慢します」
「銀さんは無理かも」
「え……」
「朱里ちゃん不足で、我慢できねェかも」
寂しいなんて、正直に言わないけど。
触れられて、手出しできない拷問もあれば。
この体温を感じられない苦痛もあるなんて。
ちょっと前なら、考えもしなかったのに。
「本当、早く帰ってきてね」
俺の言葉に、手を差し出した朱里ちゃんは。
優しい手つきで、俺の頭を撫でた。