第23章 望
「坂田さん、このベッド、回りますよ」
円いベッドの上で、はしゃぐ朱里ちゃんを。
部屋の入り口に凭れて眺める。
さっきまで、怯えた視線を投げてきたのに。
遊園地気分か、コノヤロー。
俺の理性が保たれてる間に。
帰るって言ってくれ。
「備え付け……どれかな?」
ベッドの回転が止まって、それを動かすためのボタン周辺を漁り出す。
ピンクの照明の下で、好き勝手に動いて。
パンツ、見えないようにしてね。
「あ……」
小さく漏れた声と共に、パタンと何かを閉めた音が聞こえて。
振り返った朱里ちゃんと、目が合った。
「2個じゃ、足りない?」
「足りんの?」
「………」
だから、先に言ったのに。
その気になっちゃったら、足りなくて満足できないって。
こんな、如何にも誂えた部屋に二人きりで。
ベッドが皿で、朱里ちゃんがメインディッシュ。
美味しく食べられても、文句言えないよ?
「帰んぞ」
部屋の中、見たいって望みは叶ったんだから。
茶番は終わり。
散歩も終わり。
家帰って布団入れば、眠くなる頃合い。
出口に向かえば、渋々でも付いて来るだろうと思ったが。
ドアの前で暫く待っても、部屋から出てくる気配がない。
「朱里ちゃん、いい加減にしないと置いてくぞ」
部屋を覗くと、姿がない。
拗ねて隠れてるかと思ったが。
何でバスルームから音がすんの?
帰る気なんて、更々ねェじゃねーか。