第23章 望
恥じる女と。
意地悪く嗤う男。
時間と料金が書かれたパネルの前で、突っ立ってれば。
人目を引くのは、当然で。
酔っぱらいに冷やかされたりも、するわけで。
「兄ちゃん、お盛んだね~」
そんな野次も、飛んでくる。
つーか、盛んじゃねェんだよ。
こちとら、そんな楽しい状況じゃねェんだよ。
こんだけ美味しいシチュエーションを。
理性と良心で、抑えてんだから。
こんな場所に連れてきた、俺が悪かった。
頑として歩を進めない朱里ちゃん。
抱き抱えてでも、ここから離れたい俺。
散歩の場所を誤ったのを、今更悔いても遅い。
「あーもー、どうなっても知らねェぞ」
空いた手で頭を掻いて。
繋いだ手を、強引に引く。
一瞬、全身に緊張を垣間見せて、身を引くけど。
銀さんは、朱里ちゃんの望みを叶えるだけだから。
今更怖じ気づいても遅いって。
甘やかすのも、致し方無いと内心笑いが漏れるわ。
俺は朱里ちゃんに視線を向けないまま。
入り口を抜けて、灯りが点いたパネルのボタンを適当に押す。
無言でエレベーターに乗って。
停車した階の廊下を進んだ。
握った掌が汗ばむ。
社会科見学をしたがったのは朱里ちゃんだから。
銀さんは、付き添い。
部屋の中見て、満足して。
大人しく退いてくれれば。
俺も手荒なことしないけど。
誘われたら、退くに退けなくなっちゃうよ?