第21章 煩
万事屋に戻ってから、朱里ちゃんは明日支度をすると。
和室で荷物整理をしている。
手持ち無沙汰な俺は、テレビを見ながら。
時折、その様子を伺った。
乱雑に詰められた衣類を畳んで、整頓すると。
期間は知らねェが。
荷物が妙に少ない。
「長いの?」
俺の問いに。
「今回は、1ヶ月程」
そう言って、目を閉じた。
ソファから立ち上がって、その横に座る。
頭を撫でて。
「…銀さん、ここで待ってるから」
そう言って笑いかけると。
「はい……」
涙ぐんで、抱きついてきた。
「朱里ちゃんは泣き虫だな」
今生の別れでも、あるまいし。
それとも、今までとは違う危険な任務?
今までは、任務前の不安定さ。
誰にも見せずに、過ごしてきたのか。
「今まで偉かったな」
また『子ども扱い』と怒るかもしれねェが。
背中を数回撫でいると。
身体の力を抜いて、胸に寄りかかる。
「離れるの、嫌?」
「嫌です」
「……俺も」
「坂田さんも?」
「そーだな。銀さん、結構寂しがりだから」
胸に埋めた顔を上げて、朱里ちゃんが口を開く。
「すぐ……帰って、きます」
「うん」
「それまでは……私だけの、坂田さんでいて」
「うん」
そんな当たり前のこと。
心配、しなくていいのに。
別の女なんて。
今の俺にはないから。
それでも、口にして。
確認したい程に、不安なのかと思うと。
今までは、何が朱里ちゃんを奮い立たせてたの?
恋仲になったことで。
弱さを生んだというなら。
いっそのこと、祝言でも上げちゃう?