第21章 煩
「銀さんの股間センサー、他の女に反応しないから」
背中を抱いた腕を緩めて言うと、クスクスと声を出して笑う。
さっきまで、泣き顔だったのに。
「コレ、マジな話だからね」
他の女に反応しないってことは。
一万が一、モテ期が来ても。
火遊びの仕様がない。
だって、勃たないんだから。
エロ本もDVDも。
見ても楽しめないんだから。
子孫繁栄だって。
朱里ちゃんが居なきゃ、成り立たない。
地球上で、唯一人の相手なわけで。
拒絶されたら、俺で『坂田家』終わるってことだ。
折角なら。
サラサラなストレートの遺伝子。
強めに頼むわ。
「前に言ったけどよ……俺ァ、行くときも、イクときも、逝くときも……全部、朱里ちゃんと一緒がいい」
もう一度、腕に力を込めて。
「責任取れよ、コノヤロー」
首筋に顔を埋めて、言った。
たぶん、赤い顔。
見られたくない一心で。
一世一代の大勝負。
プロポーズみてェで。
それには程遠い。
好きも愛してるも。
愛の言葉なんて、一度も言ってねェし。
こんなふざけた台詞で、愛情感じろって。
自分勝手で、馬鹿な話。
どんだけ大事か。
言葉以外で。
どうやったら、伝わるのか。
「早く帰ってきてね」
顔を上げられないまま、吐いた弱音。
恋仲になって、まだ数十時間。
今まで持ったことの無い感情を。
どうやったら手懐けられるのか。