第2章 住
俺も。
朱里ちゃんも。
互いの最期を看取ることができるなんて。
正直、思っちゃいねェ。
どれだけ『生』にしがみついても。
そのときの『戦場』は選べない。
互いの最期を見届けるなら。
互いの胸に刃を突き立てて。
真正面で殺り合わなければ。
そんなこと、叶うはずもない。
あのとき。
俺に看取られて逝くことを。
朱里ちゃんは『一生のお願い』と言った。
俺か。
朱里ちゃんの。
どちらかが、先に逝くことが大前提で。
身寄りの無い自分の。
最期の在り方だと。
『俺が置いて逝かれる側?』
脳裏にそう過ったけど。
あのときは、それでも良いと思ったよ。
俺の傍を選ぶってことが、どういう意味か。
知らないみたいな口振りで言うから。
知ってる?
女房に先立たれると、男は生きていけねェらしい。
だから銀さん、置いて逝かれても直ぐに追い付くわ。
六文で船頭脅して、高速船乗ってくから。
そのときは、三途の川の向こうで待っててくれ。
でも、アレって。
最上級の口説き文句だろ?
俺と、添い遂げるって。
そういうコトだよね?
先に言われちゃったら、男が廃るってもんだけど。
先越されちゃったわけだ。
「頼むわ」
ニヤけた面をジャンプで隠して。
素っ気なく俺は答えて。
「衣食住を共にするって意味、解ってますか?」
漫画を読むフリをして呟いたのを。
今でも鮮明に憶えてる。