第20章 姿
「風呂の仕度、できたから起きろ~」
襖を開けて、声を掛ける。
起きなくて当然。
数時間前まで、散々してたんだから。
「起きないと、もう一回すんぞ~」
嘘も方便。
本当にしてもいいけど。
布団から出れなくなりそうだ。
「朱里ちゃーん。お風呂の時間だぞ~」
小さく動いて、布団の中で丸くなる。
動いた拍子に、肩が露になって。
肩の後ろ側の、紅い跡が見えた。
たぶん、着物を着ても。
隊服を着ても、見える位置に。
無数の印がある。
『見える場所は駄目』って言う女もいるが。
朱里ちゃんは、一度も拒絶しなかった。
吸うも舐めるも、従順に。
嫌も駄目も、その一瞬を止めるための言葉。
「襲うぞ、コラ」
片方の耳を、枕に埋めて。
もう片方の、無防備な耳。
唇を近付けて、話し掛ける。
ビクッとしてから。
身体を縮こまらせて、布団に潜り込む。
非番の日の寝起きの悪さ。
相変わらずだわ。
疲れさせたのは俺だけど。
「もうちょっと、だけ……」
「もうちょっとなんてねェよ……襲うって言ったの、聞こえなかった?」
結局、布団の上から身体跨いで。
手首捕らえて、引き寄せて。
目が覚めるように、口付けて。
酸欠になる前に、起きろ。
女のコが憧れる王子様みてェな。
目覚めのキスなんて。
今は無理。
ちょっと、ふざけた感じでしなきゃ。
第3ラウンド、入っちまう。