第20章 姿
もうちっと寝てろと言って、頭を撫でて。
規則正しい寝息を確認してから、部屋を出る。
その行為が、100m全力疾走と同じくらいに体力消耗して。
あの体躯で、数時間続けたと考えたら。
疲れて然りであって。
俺ですら、怠いんだから。
御免。
銀さん張り切り過ぎたわ。
裸のまま、風呂場に向かって。
全身に貼り付いた、パリパリしたものを流す。
ついでに風呂掃除をしてから、湯を張って。
服を着てから、昨日の片付けと、飯の仕度。
ホカホカご飯が炊ける頃、起こしてやんねーと。
風呂入ってる間に、床を綺麗にして。
着物の染み抜いて、色々洗濯しなきゃなんねーし。
普段は当番制でも、コレばっかりは。
俺がやるべき、ことだろう。
つーか、お子様には見せられない。
「……絆されてんなぁ」
自嘲気味に出た言葉に。
自分自身も笑っちまって。
自覚して、観念する。
眠気もそっちのけで、甘やかそうとしてる時点で。
「………絆されてるわ」
冷蔵庫から出した葱を刻みながら。
結構、尽くすタイプの自分にも笑っちまって。
ぬるま湯に浸かってるみたいな、安心感に。
小さな溜息が出た。
その温もりは。
酷く甘やかで、柔らかい。
手に入れれば。
手放しがたくなる。
欲しいと願ったのは自分だというのに。