第2章 住
「コイツは…」
左の小指に。
黒い髪。
いつぞや日輪に教えられた『心中立て』が。
痛くない程度に絡まっている。
丁寧に。
でも。
手荒にすれば外れてしまう緩さで。
「こんなトコロで遠慮すんな…」
昨晩、布団に入る前にはなかった誓い。
好いた女が相手なら。
独占欲丸出しなくらいが丁度良い。
「もっとキツく縛ってくれりゃ、いいのによ…」
誓いの意味が。
朱里ちゃんは、俺だけのモノってこと?
それは…十二分に知ってるよ。
どんな野郎にも。
死神にだって、渡さねェ。
俺の束縛、舐めんなよ?
逆に。
俺が、朱里ちゃんだけのモノってこと?
俺は、みんなの『万屋屋 銀ちゃん』だ。
それでも、『坂田銀時』って男は。
もう随分と前から、『朱里ちゃんだけのモノ』なんだけど。
ちゃんと伝わってなかった?
それとも。
待ってろってこと?
ひたすらに信じて。
何時か判らねェ『時』を。
偉く酷な話じゃねェか。
此処に居る限り、孤独ではないけれど。
護るモノが、1コ足りねェ。