第2章 住
「にゃー」
眠……。
猫が…鳴いてる…。
もう……朝……。
「……朱里ちゃん!?」
嫌な汗をかいて目が覚めた。
そんな俺を、昨日の猫が覗き込んでいる。
両腕で掻き抱いたはずの彼女の肢体は消えて。
俺の腕には、何も残っていなかった。
上半身を起こして、彼女が居た筈の場所に掌を這わせて。
夢か現かを探ろうとする。
結果は、惨敗だ。
猫は黙って俺を見ていた。
「お前以外、誰も招いてねぇんだけどな…」
呟くように出た独り言。
この手に捕らえた温もりが何だったのか。
『枕元に立つって言うけどよ、』
「いつもみたいに、俺の腕の中にいたじゃねーか…」
背中を再度布団に沈めて、天井を仰ぐ。
腕で両目を覆い、小さく溜息を吐いた。
夢みてぇで、夢じゃねぇ。
現実として受け入れる覚悟は、まだ無かった。
目を開けて、腕を退けて、視点を定める。
指先に。
意識が集中する。